コレステロール対策『目標値を知る』

【ポイント】
コレステロールなどのバランスが乱れる脂質異常症は心筋梗塞などを招く。
●LDLコレステロールの目標値は、持っている危険因子により異なる。
●脂質異常症以外の病気や、生活習慣も含めて改善することが大切。


■コレステロール

動脈硬化などを進行させ、心筋梗塞などを招く

日本人の死因の1/3は、動脈硬化を原因とする「血管病」です。 代表的な血管病には「脳卒中」のほか、心臓の周囲を取り巻く冠動脈が動脈硬化によって狭くなったり詰まったりして、 心臓の筋肉(心筋)が酸素不足に陥る、狭心症や心筋梗塞などの「冠動脈疾患」があります。 そして、動脈硬化を引き起こし、進行させる大きな要因となるのが、血液中の「コレステロール」です。 日本人の血液中のコレステロールの平均値は過去30年間で上昇してきており、冠動脈疾患への影響が懸念されています。 そこで、より効果的に動脈硬化を予防できるよう、治療の指標となる日本動脈硬化学会のガイドラインが2012年7月に改訂されました。


■脂質異常症

コレステロールなどのバランスが乱れることで起こる

コレステロールは脂質の一種で、細胞を含む膜や、さまざまなホルモンなどの材料になる、体に不可欠な物質です。 主に肝臓で合成され、血流によって体の隅々にまで運ばれています。 そして使われずに余ったコレステロールは、再び肝臓に戻されます。 脂質であるコレステロールは、そのままでは血液に溶け込めないため、次のような粒子によって血液中を運ばれていきます。

▼LDL
コレステロールを体の隅々にまで運ぶ”運搬車”のようなものです。 血液中に増えすぎると、血管壁に入り込み、動脈硬化を進めるため、”悪玉”と呼ばれています。
▼HDL
余分なコレステロールを肝臓へと戻す、いわば”回収車”です。 血管壁に溜まったコレステロールも回収するため、”善玉”と呼ばれています。

LDLとHDLがバランスよく存在していれば、血液中のコレステロールは適切な量に保たれます。 しかし、LDLが多すぎたり、HDLが少なすぎたりすると、動脈硬化が進行してしまいます。

◆食生活や運動不足などが原因となる

LDLが増えたり、HDLが減る原因は、「食生活の欧米化」「肥満」「運動不足」「家族歴(遺伝)」など、さまざまです。 なかでも問題となるのが、食生活の欧米化です。コレステロールの多くは、食べ物から吸収された栄養を材料にして、 量を一定に調節しながら作られますが、食べ過ぎたり、脂質や糖質を摂りすぎると、そのバランスが乱れて、 結果的に悪玉が増え、善玉が減ってしまいます。 また、食べ過ぎなどにより「中性脂肪」が増えると、その影響でLDLよりもさらに悪質な粒子「超悪玉LDL」が増え、 動脈硬化がさらに促進してしまうのです。


●脂質異常症の診断基準

より厳密な管理のために、境界域が設けられた

血液中の脂質であるLDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪が次の場合、「脂質異常症」 と診断され、治療が必要になります。
・LDLコレステロールが140mg/dl以上の場合(高LDLコレステロール血症)
・HDLコレステロールが40mg/dl未満の場合(低HDLコレステロール血症)
・中性脂肪値が150mg/dl以上の場合(高中性脂肪血症)
です。これらのうち、低HDLコレステロール血症と高中性脂肪血症に関しては、 それぞれの診断基準値を満たさないようにすることが、治療の目標になります。

◆境界域でも要注意

LDLコレステロール値は、診断基準となる140mg/dl以上の場合ならば治療が必要ですが、 人によってはより低い値でも冠動脈疾患を起こすことがあります。 そこで、改訂されたガイドラインでは新たに120〜139mg/dlを「境界域」として、注意を促しています。 LDLコレステロール値が境界域にあたる120mg/dl以上の人は、脂質異常症以外の危険因子をどれだけ持っているかを確認したうえで、 それに応じた目標値が設定されます。


●LDLコレステロールの目標値

持っている危険因子によって4段階に分けられる

脂質異常症は、冠動脈疾患を引き起こす大きな危険因子ですが、危険因子はそのほかにも、「高血圧」「糖尿病」 「慢性腎臓病」「喫煙」「家族歴」「年齢」など、さまざまなものがあります。 これらの危険因子を持っているほど、冠動脈疾患を引き起こしやすくなります。 そこで、持っている危険因子によって、冠動脈疾患のリスクを次の4段階に分け、 その段階ごとにLDLコレステロールの目標値が設定されます。

▼最大リスク
過去に冠動脈疾患を発症したことがある人は、リスクを最大とし、100mg/dl未満を目標にします。

▼高リスク
「糖尿病」「慢性腎臓病」「非心原性脳梗塞」「末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)」 などが一つでもある人は、120mg/dl未満を目標にします。 また、喫煙や高血圧など、その他の危険因子やその程度によって、10年間の冠動脈疾患による死亡リスクが2%以上の場合も、 高リスクになります。
新しいガイドラインでは、危険因子に「慢性腎臓病」が加わりました。 腎臓の機能低下は、血圧や血液中の脂質などへ悪影響を与えるからです。 「非心原性脳梗塞」は、心臓に原因がある場合以外の脳梗塞、 末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)は、下肢の動脈硬化を指します。
【関連サイト】  『慢性腎臓病』

▼中・低リスク
その他の危険因子のうち、何をどのくらい持っているかによって、中リスク、低リスクに分けられます。 前者は140mg/dl未満、後者は160mg/dl未満を目標にします。
【その他の危険因子】
性別、年齢、喫煙、高血圧、耐糖能異常、早発性冠動脈疾患家族歴、低HDLコレステロール血症。 (耐糖能異常とは、糖代謝の悪い状態で、糖尿病の前段階。 早発性冠動脈疾患家族歴とは、男性55歳未満、女性65歳未満で冠動脈疾患を起こした家族がいることを指します。)

◆中・低リスクでも要注意

最大リスクや高リスクでないからといって、安心することはできません。 危険因子が1つ加わるだけでも、1段高いリスクになってしまうことがあります。 女性は心筋梗塞を起こすリスクが男性より低いため、同じ条件であれば、男性よりもリスクは低くなります。 ただ、女性でも危険因子が加わればその分リスクは増すので、油断はできません。

◆目標値がわかったら

脂質異常症と診断され、自分の目標値が決まったら、まずは食生活や運動などの生活習慣を改善します。 それでも目標値を達成できない場合、もしくはリスクが高い場合には、薬物療法が検討されます。 ただコレステロールや中性脂肪の値だけに注目するのではなく、他の危険因子もしっかり把握し、 総合的な視点から、冠動脈疾患を防ぐことが大切です。