脂質異常症の発症機序

脂質異常症発症機序を知ることは、その予防と治療にとって大切なことです。 なぜなら、発症機序によって対策が異なるからです。


■脂質異常症(高脂血症)とは?

高脂血症から脂質異常症へ

2007年4月に発表された「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版」では、 従来の「高脂血症」の表現が『脂質異常症』と変更されました。 従来のガイドラインで用いられてきた「高脂血症」という記載では、 重要な脂質異常症である低HDLコレステロール[HDL−C]血症を含む表現として適切ではないこと、 および諸外国の記載と統一するために脂質異常症に記載を変更したと述べられています。 ただし、高LDLコレステロール[LDL−C]血症、高トリグリセライド[TG]血症を一括して「高脂血症」 と呼ぶことを排除するものではないとしています。 つまり、高LDLコレステロール血症、高トリグリセライド血症などの「高脂血症」と、 低HDL−C血症とを合わせて「脂質異常症」と呼ぶことにしたのです。

血清脂質には、コレステロール、トリグリセライド(中性脂肪)、リン脂質、遊離脂肪酸(FFA)などがあります。 また血清脂質はリポ蛋白として存在しているので、リポ蛋白の異常も脂質異常症に入ります。 血清脂質値が異常に高値の場合に高脂血症といい、異常に低下した場合は低脂血症といい、 高脂血症と低脂血症およびリポ蛋白の質的異常などを包含して「脂質異常症」といいます。 また、脂質代謝異常には、多くの種類が見出されており、そのなかで、コレステロールエステルが 肝臓などに蓄積してくる病気がありますが、それは「リピドーシス(脂質異常蓄積症)」として区別されます。
特殊な脂質の異常は、β-シトステロール血症など異常になった脂質の名前、あるいは病因となった遺伝子異常で命名されることもあります。


●脂質異常症の発症機序

脂質異常症の診断基準に取り上げられているのは、高LDLコレステロール血症[高LDL−C血症]、 高トリグリセライド血症[高TG血症]、低HDLコレステロール血症[低HDL−C血症]の3つです。 この3つが、動脈硬化性疾患のリスクの高い主要な脂質異常症だからです。脂質異常症の発症機序を知ることは、 その予防と治療にとって大切なことです。つまり発症機序によって対策が異なるからです。

続発性脂質異常症では、まず原疾患の治療を優先的に進めることが必要です。 甲状腺機能低下症では高脂血症が、甲状腺機能亢進症では低脂血症が認められます。 肝疾患、腎疾患などではさまざまなタイプの脂質異常症が合併してきます。 糖尿病では高トリグリセラド血症に低HDL−C血症を伴うことも少なくありません。 脂質代謝に関係する酵素、受容体、アポたんぱく、転送たんぱくなどの機能異常に、食事、運動、薬物、ホルモンなどが影響し、 脂質異常症が発症してきます。


●リスクファクターについて

動脈硬化性疾患のリスクファクターとして、下記に示す因子が挙げられます。 リスクファクターの中でも高LDL−C血症、低HDL−C血症、高TG血症のほか、高Lp(a)血症、 高レムナントリポたんぱく血症、small dense LDLの増加は脂質異常症に入ると考えられます。 リスクファクターは、それぞれが1つあってもリスクになりますが、2つ、3つと複数重なるほど リスクが高くなります。さらに肥満もリスクファクターになります。 下記では肥満がリスクファクターに入れられていませんが、肥満の中でも内臓脂肪型肥満は、 メタボリックシンドロームのもとになる状態として予防的管理が必要であると考えられます。 内臓脂肪型肥満に脂質異常症、高血糖、高血圧などが合併してくると、動脈硬化性疾患が高リスクになることにも 注意が必要だと考えられます。

▼主要なリスクファクター
・高LDLコレステロール血症
・低HDLコレステロール血症
・高トリグリセライド血症
・加齢(男性>=45歳、女性>=55歳)
・糖尿病(耐糖能異常を含む)
・高血圧
・喫煙
・冠動脈疾患の家族歴

 ▼その他の考慮すべきリスクファクター
・Lp(a)
・レムナントリポたんぱく
・酸化LDL
・ホモシステイン
・small dense LDL
・急性期反応たんぱく(C反応たんぱく、血清アミロイドたんぱくなど)
・催凝固因子(組織プラスミノーゲン活性化因子<t-PA>、
 プラスミノーゲン活性化因子インヒビター、フィブリノーゲンなど)